朗読劇『革命への行進曲』
- _ ぬぺ
- 2023年8月7日
- 読了時間: 5分
更新日:2023年12月3日

うーん写真が下手。
何はともあれお邪魔してきました。
声優さんの朗読劇は配信を購入したのが1回、実際にお邪魔するのは今回が初めてでした。
TOKYO FMホールも初めてだったのですが、思ったよりもホールが広くなかったので結構近めの印象でした。嬉しい。docomoの電波が1mmも届かなかったけど。
【あらすじ】
ボーマルシェの喜劇『フィガロの結婚』のオペラ化が決まった。
作曲は当時の君主:ヨーゼフ2世の指名でモーツァルトになったものの、原作自体が反体制的な部分があって何度も改訂を繰り返したという代物。当然ながら今回のオペラ化にあたり、作曲担当のモーツァルトと脚本担当のダ・ポンテは「劇をオペラにアレンジする」以上の変更を迫られることになる。
その変更のために監督としてつけられたのが本作の主人公であり、検閲官のヘーゲリン。
今までは劇の検閲ばかりしていたらしく、音楽の知識は皆無。
それでも今まで通り検閲してやるだけだ、とモーツァルト&ダ・ポンテの2人と共にオペラを作り上げていく……
という感じ。
「君主に対する不敬に当たらないか」を徹底的に精査するヘーゲリンと、
これを「万民に対する愛の物語」と捉えるモーツァルトとダ・ポンテ。
3人を中心に「言葉の力」「音楽の力」とは何なのかを突き詰めていく物語でした。
【キャラクター】
《ヘーゲリン》
検閲官という肩書、しかも宮廷お抱え。まあ分かりやすく厳格で堅物って感じの人でした。
ただそれ以上にすごく真面目。どこまでも真面目。
常にあらゆる可能性を検討して事態に対処したり、物事をそのまま受け取らず深く熟考したり。台本に対する指摘が「それは検閲ではなく校閲では?」って感じの時もあり。
『フィガロの結婚』の検閲にあたって原作とその前編を精読してきたり、「音楽の力」という可能性に気が付いてからは積極的に勉強したりとすごい努力のうえで今の立場を掴み取ったんだろうなって感じでした。
検閲官ってわりと悪役ポジションで描かれがちな立場だと思うのですが、今作のヘーゲリンはたくさん迷い、たくさん悩みつつも、自分の意志をしっかり持った人として描かれていて素敵だなと思いました。
なによりも自分の知らない世界を受け入れる柔軟性が好きでした。
途中の公演名回収の台詞、そして最後の照明の色が変わったカーテンを背負った独白が本当に好きで。
自分が今やっていることが将来どんな意味を持つかなんて誰にも分からないし、彼があの時自分の意志を信じて下した決断がそれなら、それでよかったんじゃないかなって私は思います。
《ダ・ポンテ》
脚本家。
モーツァルトとはいろいろ波長が合うみたいで、終始いいコンビだった印象。演じる木島さんとモーツァルト役の山中さんのアイコンタクトもいっぱいあって見ていて楽しかったです。
いると安心する人、という印象。基本的に超厳格なヘーゲリン・天才肌のモーツァルトと一緒にいることが多かったせいか、程よく柔らかい態度で、思考も我々一般人に一番近い人だったので2人と一緒にいることで空気感の緩衝材になってくださっていました。
あとめっちゃ余談なんですけど、あのお衣装のスーツってグレーだったんですね。現地だと照明の関係で茶色に見えてたんですよ。
公演終わってTwitter見て、「灰色?!」ってなってました。
《モーツァルト》
音楽家。
「稀代の天才」という感じ。そもそも1人だけお衣装のフォーマル度合が違うし、基本的に相手に敬語使わないし。常に飄々とした態度でニコニコ人の話を聞いている。
ヘーゲリンからの「ここを削れ」という要求も「うん分かった~」のノリで受諾してその場でばっさりカット。思い切りが良すぎる。流石にヘーゲリンじゃなくても「お前なんか考えてるやろ」とはなる。
あと多分ゲラ。「貴族が椅子の下に隠れる」シーン、確かに面白いけどそこまで笑うものかい?
そんな割とゆるめのキャラですが、その裏には絶対的な自分の能力への自信と、なにがあろうと自分の表現を曲げない意志、そして音楽の力を信じる強さがある。音楽に乗せて伝えればいい、という考えのもとでどんどん曲を作っていく。かっこいい。
全てを努力でなんとかするタイプのヘーゲリンに対して、なんでもサラッとやっちゃう天才肌としてのモーツァルト。どちらも好きです。
ヘーゲリンに対して叫ぶシーンが圧巻でした。ここ最近、山中さんの叫びのお芝居に情緒を握られている気がする。
《スヴィーテン》《ルイーザ》
メイン3人に対するサブキャラ的立ち位置。
おそらく史実の人物だから演者名としてセレクトしたと思われますが、実際の出番はそこまであったわけではなく……。
駒田さんはヨーゼフ2世や劇団スタッフ、本渡さんはピアニストや秘書、コンスタンツェとの兼役。
スヴィーテンはヘーゲリンの上司。やや柔軟な方とお見受けしたのでもう少しどんな人か知りたかったなぁ。
ルイーザは伯爵夫人役のソプラノ。
出番は短かったものの、伯爵夫人という役、この作品を大事にしているのがひしひしと伝わってくる人でした。
【その他】
今回モチーフがオペラ、音楽だったのですが、中世ヨーロッパも音楽も知識がほぼ皆無の私でも楽しめる作りになっていたのは大変ありがたかったです。
登場人物もそんなに多くないし、めちゃくちゃに頭を使うって感じではなかったかも。
検閲がメインである以上、「このシーンの変更によって何が変わるんだろう?」と考えるシーンが複数ありました。それも実際に音楽をつけて変更前と後を実演してくださったり、「音楽を何も知らない」というヘーゲリンがいろいろ学ぶところの件をこちらにも見せてくださったりしているので、同じく音楽知識皆無の私も「なるほど!」と変化を体験できるのがすごく楽しかったです。
やっぱりこういうのは実際に聞いてみないと分からないことも多いし。
エピローグのカーテンの演出がめちゃくちゃに、本当に、好きでした。
先にも触れたモーツァルトの叫びとかタイトル回収も好きだったけれど、一番はエピローグかなぁ。
あと初めて行ってみて思ったのは、こういう公演ごとに演者が変わるタイプの作品は複数公演取ってなんぼだなあということ。
全部見終わった後にパンフレットの演者一覧とかみると、「あの台詞を○○さんが?!」「これこの人だったらどんなふうに演じるんだろう…」みたいな想像が無限に湧いてくる。ソプラノ歌手を男性声優がやってる回あるし。
いつかまた機会があれば、今度はいろんな公演を楽しみたいなと思います。
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