これが最高壮馬…………ッ!!
【あらすじ】
秋葉原と思しき街を駆ける男がいた。
生き物が何か分からない……フェレット的な……??
血走った目、汚れた服。
尋常ではない姿の男が向かう先は。
【田中】
遡る事16年前。
当時小学3年生だった彼のクラスでは、担任の意向で持ち物の均一化が行われていた。持ち物から家庭の貧富の差が出ないように、という配慮から来るものであった。
(ここの生徒さんの中に木村さん花江さんがいた気がするが気のせいだろうか)
結果、流行ったのは文房具のこだわりを見せる事。特に消しゴム、所謂「おもしろ消しゴム」が流行った。
田中のクラスには、小学生のヒエラルキーを構成するパラメータにありがちな「体力」「頭脳」「芸術」「顔の良さ」「面白さ」とは別に、「所持消しゴム」が追加された……というのは流石に言い過ぎだったが。
消しゴムのパラメータに磨きをかけようとしたのは、田中と佐藤の2人。
モグラの佐藤くんはお小遣いが多いうえ、出張が多い親によく消しゴムを買ってもらっていた。
一方田中の持ち駒は親戚から貰ったドードー。
自分が鳥好きで、鳥の図鑑を読んだり、オカメインコのマルを飼っていたりしたこともあり、相当気に入っていた。
……が、やはり財力の前には無力。
一周回って普通の消しゴムを見せたり、美術では食パンを消しゴム代わりにするんだとか言ってみたりしたけれどダメでした。小学生の努力って可愛い。
そんな彼の運命を変えたのが、学校のパソコンの授業で見つけたネットオークションサイトの商品。
「世界にひとつの激レア☆オリジナル呑楽消しゴム」
これを手に入れさえすれば、佐藤に勝てると思った。
こっそりと父親のクレカの番号を控え、
兄のPCを使ってオークションサイトに登録、入札。
●「その時、まるで自分がスーパーハッカーになったかのような高揚感を覚えた。」
しかしオークションはそう甘くない。
翌日には別の出品者が更に高い金額を入札していた。
田中も落札価格を釣り上げて応戦する。
しかし最終日。
相手はまだ折れない。
時間がない。しかも兄が帰宅して来てしまった。
9歳の少年に、もうまともな判断力は残っていなかった。
●「超えてくる……奴なら超えてくる……!!」
「100,000円」
田中は消しゴムを手に入れることに成功した。
これを田中革命という。
しかし、待てど暮らせど消しゴムは来ない。
「ノークレームノーリターン」という言葉に縛られ、それ以前に詐欺だと行動を起こすこともできなかった。
その頃にはとうに学校で消しゴムのブームは去っていたというのに。
さらにカードの明細を見て父親からは相当叱られた。
当然である。人が1か月暮らせるくらいの額が吹っ飛んでいったのである。
田中革命の終わりと共に、彼は実像が無いもの、他人と競うことが嫌いになった。
時は流れて、今から4年前。
ゲーム会社に就職したばかりの田中は勉強を兼ねていくつかのソシャゲをプレイしていた。
彼はそこで「ズーロジカルガーデン」というゲームに出会う。
人気なそのゲームをインストールしたのが全ての間違いだった。
ズーロジカルガーデンには、ガチャで引けるキャラとしてドードーがあった。
当時の自分を思い出し宿命を感じた田中は、課金をした。してしまったのだ。
そしてふと気になって、ゲーム内のワールドランキングを覗いてみた。
自分は1521位という圏外にいる一方、2位と圧倒的に差をつけて世界一に輝いているプレイヤー。その名は「ditch-11」。
忘れもしない、呑楽消しゴムの出品者と同じ名前だった。
●「復讐するとするならば、あの日の俺だ。そしてあの日の俺を救うのは、今の俺なのだ。」
再び、田中革命が幕を開けた。
10万円の課金を皮切りに、本格的にタガが外れた。
明らかに質が悪くなっている服とやつれた毛並みに表情。余裕のない精神、聞こえる幻聴、汚いデスク。そして手放すことができないスマホ。
課金額は500万を超え、仕事中だろうが会議中だろうがお構いなくスマホを触る日々。
●「病気だ。ただの病気。いとも簡単に10万円を課金するようになっていた。」
そしてついにその日は訪れた。
夜道を歩いている最中。彼は遂にドードーを引き当てたのであった。
感涙にむせび泣く田中。
しかしそこに突っ込んできたのは1台のタクシー。
前回、白川に会うために道を急いでいた小戸川であった。
躓いた彼はスマホを手放してしまい、そのスマホは排水溝へボチャン。
幸いスマホの回収と、携帯ショップでのバックアップの復元には成功した。
……が、ドードーのデータはバックアップされていなかった。
田中革命は、再びditch(排水溝)のせいで失敗したのであった。
失意の中帰宅した彼を待ち受けていたのは、ずっと一緒に過ごしてきたインコのマルの死だった。
何もかもを失い、近くの公園にマルを埋めに行く田中。
木の根元を掘っていると、何かにぶちあたる。
●「ゲームでは手詰まりかと思われたタイミングで貴重なアイテムを手に入れる。よくできている。そりゃそうだ、作っている奴がいるんだから。じゃあこの世を作った奴もいるんだろ? この世はプログラミングされてるんじゃないか。」
●「なぁ神様、アンタだよ」
彼が掘り当てたのは、ドブの拳銃だった。
3日後。
田中は街を徘徊していた。
全ては小戸川を見つけ出し、復讐するため。
途中でぶつかった柴垣に呼び止められるが、田中の会話は一方的。
「途中まで並走してるつもりやってんけど、俺らハイウェイとサブウェイやったん?」という柴垣のコメントが言い得て妙。
手に入れて終わりのコレクションではなく、その後を考えてワクワクするようなレアアイテムを。
何もかもを超越する強烈な執着を握りしめて。
拳銃が入った紙袋を片手に、男は街をひた走る。
【以下雑記】
やべぇもんを見た…………。
30分ほぼ全て田中というひとりの人間(?)によるモノローグで占められる第4話。
声変わり前の男の子から新入社員、そしてゲーム廃人まで全ておひとりでこなした斉藤壮馬さんに拍手を。
視聴後のこの充実感は「四畳半神話大系」の浅沼晋太郎さんのアレ以来です。
こういうプロの仕事を真っ正面から叩きつけられるのほんと痺れる。
さて内容ですが。
「子供らしい判断力の甘さと行動力の速さ」があまりにもリアルでしたね。
目先の栄光に取り憑かれているところだったり、
ノークレームノーリターンに囚われていたり。
そもそもあの消しゴムが本当に世界でひとつだけのものなのかはきちんと調べないといけないと思いますし。
事が大きくなるまで大人を頼らないのも子供らしい。
そしてまさか呑楽消しゴムがここで出てくるとは思っておらず……。
ざっとまとめると、
16年前呑楽消しゴムがオークションに出る→落札されたものの発送されず→白川のもとへ→小戸川のもとへ
という感じか。
謎の出品者ditch-11ですが。「ditch」には「ドブ」という意味もあるそうで。
まあ綺麗に繋がりますね。
おそらく呑楽消しゴムは偽物とかなんでしょう。3000円って消しゴムとはいえレア物にしては安すぎるし。
ドブと誰かの間で取引が行われ、その過程で「何か」を呑楽消しゴムという体で、もしくは消しゴムの中に仕込んで出品。
存在しないものをググって落札するようなやつはいないと思っていたのでしょう。3000円で「何か」をドブは相手に譲渡。取引成立。
……というはずだったものの、田中少年の乱入で取引不成立。
とりあえず田中には商品を渡さない、とかで一旦収めたんでしょうか。
結果呑楽消しゴムはドブの手元に残り、それが16年経って再利用され、小戸川の立場を不利にするために使われているといったところ?
こうなると女子高生失踪事件だけじゃなく、16年前の出来事から洗うことになるのか……?
ともあれ、田中が呑楽消しゴムと出会った時一体どんな顔をするのか、それが少し楽しみだったりします。
次回:ツッコミどころ満載の時にはマジでツッコんでるよ。私のここ最近の木曜昼時のTwitter見る??