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  • 執筆者の写真_ ぬぺ

49話

誰がために戦うのか




【あらすじ】

この戦いに、正義は、ない。

そこにあるのは、純粋な願いだけである。




【神崎優衣】

兄によって閉じ込められたことをきっかけに過去の記憶を思い出す。


「私、死んじゃってたんだ」


事の顛末。

親から虐待を受けていた神崎兄妹。部屋に閉じ込められて絵を描いていた際に優衣は倒れる。

士郎が助けを呼ぶが、もちろん親は全て黙殺。というか目の前で扉閉めるのかなりタチが悪いぞ。

優衣は息を引き取る。そこに現れたのは鏡の中の優衣。兄に自分が本来の世界の優衣に代わって生きること、それも20の誕生日までであることを告げ、士郎はそれを受け入れる。

鏡の中の優衣がこちらの世界にやってきた衝撃で屋敷は破壊されて両親は死亡。

士郎は改めて優衣を守ることを決意した。



士郎は鏡像の優衣もまぎれもなく自分の妹として守ろうとしていたわけだが、自分の真実を知った優衣はこれを拒否。

同時に自分が生きていてはならないと思ったことで消失が早まる。

見守る士郎・真司・蓮の制止もはねのける。

サラッと言ってましたが、士郎は戦いの果てに得られる命を優衣に与えようとしたみたいです。その命はどこから出てくるの?


「これでいいんだよ」

 「ねえお兄ちゃん、もし、もしもう一度絵が描けたら、モンスターなんかが居る世界じゃなくて、2人だけの世界じゃなくて、みんなが、幸せに笑っている絵を、お兄ちゃんと、一緒に……」


優衣の顔には光が当たっているのに、士郎の顔には当たっていないのが細かい。

優衣は砂となって消滅。



思わず倒れ込む士郎だったが、この程度で挫けていたらそもそもこんなゲームなんてしていない。

残り2日、戦えと2人に叫ぶ。士郎がこんな声量出したの初めてでは?

真司はそれを優衣の意思を理由に拒否。

蓮はまだ戦いが有効だと考えているのでまだやる気です。「優衣か恵里か」を迫られ続けていた彼からすれば、自動的にその答えが出た訳だから、あとは進むだけなのである。




【北岡秀一】

退院して帰宅。吾郎ちゃん相手に、もう戦いを降りようかと思っているとこぼす。

死期を悟ったからとかそういうのではなく、余命を意識しつつもなんだかんだ楽しく過ごしてきた日々を思って意外と悪くないと思ったらしい。

嘘は言ってないけど強がっているのも分かる絶妙な生々しさ。それをしっかり汲み取る吾郎ちゃん。


せっかく退院したし令子さんをディナーにでも誘わないかと携帯電話を取り出すが、取り落とす。

握力も明らかに弱っている事実に重い空気が流れる事務所。無理して見なかったふりしようとする吾郎ちゃんの気遣いがしんどい。

熱い紅茶淹れますね、と言ってましたが、それは握力弱ってる人に一番渡してはいけない奴では。寧ろそこまで狙いか?いつもは気を利かせて客の分までコーヒーを淹れる吾郎ちゃんが気遣いできなくなるレベルで動揺しているっていう…?



北岡は令子さんに電話。

いつものように冷たくあしらう令子さんに対して、じゃあランチで、と食い下がる北岡。

北岡の現状を知っているめぐみさん・島田さんからの援護攻撃を受けてなんとか約束にこぎつけたらしい。


しかし、どのスーツが良いですかね、と見せる吾郎ちゃんに彼は告げる。

(ここでしっかり「デート」と言っちゃう吾郎ちゃんが好きです)


「俺、やっぱり浅倉とはちゃんと決着付けてやんなきゃいけないと思うんだ」



その頃浅倉は。

潜伏先が警察に発覚。なんども逃げられている警察は遂に発砲もやむなしとの判断を下した。

彼の背後には銃口。



先に浅倉のもとにたどり着くのは北岡か、警察か。




【城戸真司】

呆然としたまま神崎邸を出た彼に声をかけたのは令子。

変身の瞬間を見られていたことで逃げ場がなくなった仮面ライダー龍騎はOREジャーナルへ。大久保編集長から彼らが今握っている情報の大枠を聞かされ、彼もまた知っていることを編集長に伝える。


「俺、全然答え出せませんでした。今だって、優衣ちゃんが消えた事…」

📰「上等だぞこの野郎。いいんだよ、あんな答えなんか出せなくたって」

 「考えてきたんだろう?今まで。お前のその出来の悪い頭で必死によ。それだけで十分なんじゃねぇか?俺はそう思うぜ。」

 「ただし、だ。何が正しいのか選べないのは良いが、その選択肢の中に自分のこともちゃんと入れておけよ。」

 「お前が信じるもんだよ。お前だってここんとこにしっかり芯がねぇと、話し合いにもなんねぇし誰もお前の言うことなんか聞いてくんねぇだろ。な?」


よくも悪くも自分のことばかりな人間が多い今作。

こうやって損得抜きで相手のことを想ってくれる人の台詞の温かさが沁みる。

そして全てを見てきたわけではないのにも関わらず、今までの真司の言動を見透かしたような台詞の数々。何度でも言いますが本当に面倒見のいい素敵な人だと思う。



優衣の誕生日当日。

場面切り替えごとにご丁寧に挿入されて我々の恐怖心を煽ってくれたレイドラグーンの群れが遂にこの世界に侵攻。

ところでトンボがお尻の部分を水面につける目的って産卵じゃなかったっけ…?

真司・蓮両名は慌てて都心に向かい、一般人を助けつつ敵を倒していく。


もしや?と思って調べたのですが。

蓮が助けた、車のフロントに押し付けられた男はナイトのSAの伊藤慎さん、

真司が助けたフェンスに押し付けられたニット帽の男は龍騎のSAの高岩成二さんが担当されてますね。



真司の目に飛び込んできたのは、親とはぐれたのか車の隅っこで怯えている女の子。

彼女を助けに駆け付けたものの、事実上袋小路になっていたところにレイドラグーンが突っ込んでくる。咄嗟に女の子を庇った結果、背中をガッツリ刺される真司。

ひとまず女の子を逃がしてデッキを手に取るが取り落とす。口から血反吐を吐きつつも、引きずるように体を動かす。

変身するため覗き込んだガラス窓に映ったのは、共に戦ってきた蓮の姿。

真司が信じているもの。


瀕死の身体に鞭打って変身。

心配する蓮を誤魔化しつつサバイブになって戦い、共に敵を一掃する。

破れかぶれな叫びが痛々しい。



なんとか敵を倒しきった2人。

真司は助けた女の子が親と合流したのを見て安堵の笑みを浮かべる。


「やっとちょっとは答えらしいもんが見つかったかもしんない。でも、なんか俺、ダメかもしんない」


燃える車にもたれかかる真司。車にベッタリついた血の赤が映える。

駆け寄った蓮に弱々しく自分の気持ちを伝える。


1年かけて考えてきた、自分がすべきことや為したい事。

結局どれが正しいのかなんて結論はでなかった。


「やっぱり、ミラーワールドなんか閉じたい。戦いを、止めたいって。きっと、すげえ辛い思いしたり、させたりすると思うけど、それでも、止めたい。それが、正しいかどうかじゃなくて、俺も、ライダーの1人として、叶えたい願いが、それなんだ」

「だったら生きてその願いを叶えろ!死んだら…終わりだぞ」

「そうなんだよなぁ。……蓮、お前はなるべく、生きろ」

「お前こそ生きろよ! 城戸。死ぬな……死ぬな!」

「お前が、俺に、そんな風に言ってくれるなんてな」

 「ずっと、」


力なく崩れ落ちて焦点の合わない目で遠くを見つめる蓮。

それでも手は握ったままで。

良い相棒だったなあ。改めて。


13ライダーを見た時点で、おそらく生き残るのは蓮で、真司は蓮が看取るだろうということまではなんとなく予想できていましたし、真司の最期の場面写真も見たことはある。

それでもやっぱり、「戦いを止めるため」「誰かの命を救うため」に戦い抜いてきた真司が、子どもを守るために刺されて、最後に自分の願いを本当の望みに据えるという展開は、不謹慎だけれどものすごく綺麗だと思った。

創作物の登場人物の死に様はその人の生き様と限りなく近いものだと思っているのですが、真司くんは本当にそれに尽きる。



遺された蓮はゆっくりと立ち上がり、ラスボス:士郎のもとへと歩みを進める。

某人気漫画では、「遺言」を「呪い」として扱っていて。死に際に託された言葉は、心の中に一生残り続けるし、時に呪いとなってその人を縛りつける。

真司の最期の願いを聞き届けた蓮はどうするんだろう。




次回:戦わなければ生き残れない

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