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  • 執筆者の写真_ ぬぺ

47話 救世主たちの約束

リアルにボロボロ泣いてしまった




【あらすじ】

ツルギはドン・アルマゲに乗っ取られ、司令は部下を庇ってドン・ツルギに吸収された。

ドン・ツルギはというと、チキュウのプラネジュームを吸収し、仲間を増やしている最中。

プラネジュームは、惑星から命を生み出した生命の源。司令も、そして宇宙に生きる全ての命も、プラネジュームとしてドン・ツルギに吸い込まれる可能性がある。

ラプターの見立てでは、99時間後には宇宙の全てを取り込んだ完全な体に進化する。その前にドン・ツルギを止めなくてはならない。


「みんな聞いてくれ。俺に作戦が一つだけある。でもそれには、みんなに命を懸けてもらわなきゃいけない。だから、強制はしない。明日の朝、心が決まったらここに集まってくれ」




【決戦前夜】

《ガル》《ハミィ》

「私、激おこなんですけど!」


彼女が怒っているのは、今更なぜ戦うのかを問うラッキーの態度。


「そんなの……決まっているじゃない。」

「そうじゃけぇ。みんな、同じ思いガル!」


「ラッキーが嫌い」という共通項があった2人。

いつの間にか、彼が引き寄せる幸運を信じるようになっていた。

「不思議だよね」なんて言っているけれど、それは2人がきちんとラッキーを見ようとしたからだと思うよ。


「俺はもちろん乗る!ラッキーの言う、『ラッキー』にな!」

「どんなにピンチになったとしても、ラッキーが信じてるなら、私も戦うよ」



《バランス》《ナーガ》

妙に落ち着かない表情で廊下に立っているナーガ。

そこに泥棒の代名詞である唐草模様の風呂敷を被って登場したバランス。何度見ても「日本の古典的盗賊概念」と「金ピカSF世界の機械生命体」のミスマッチすごい。

わざとらしく抜き足差し足で現れています。どう考えてもナーガを和ませにかかっている。


「ナーガとの思い出の品だけまとめとこうと思って。肌身離さずね」


の割に結構小さめの風呂敷包み。何入れているんだろう。私はイテキュータマに1票入れるよ。


「……バランス。怖いんだ。こんなの初めてだ。」

「ナーガ……。おめでとう。すごい感情を手に入れたね。『怖がる』って、『今を失いたくない』って感情なんだ。でも大丈夫。君は何も失わない。僕たちは、いつも一緒だ」


このバランスの台詞好きなんだ。台詞自体がそもそも良いんだけど、それを合理主義のバランスが、あんなに優しい声で言っちゃうってのがもうダメ。ここで涙腺のピンチがだいぶ来た。

それを受けたナーガの微笑みもね。感情無いなんて嘘でしょう。



《ラプター》《スパーダ》

「こんな時、泣けたらいいなって」


最初にオリオン号に乗り込んだ秘書と、1人目の戦士という歴戦の組み合わせ。

ゆえに、「司令が居なくなった」という事実が相当堪えているのが目に見えるのが一番辛い。


ところで「野球回で泣いてなかったっけ?」なんて思ったそこのあなた。「スーパー戦隊におけるコメディ回をまともに取り合うな」を99回復唱してから出直しタマえ。


「涙が出る事だけが、泣くってことじゃないよ」


もうこのスパーダのまなざしがあまりにも優しい。伸ばす手も優しい。全部優しい。こんなの惚れない方が無理である。

スパーダの胸に頭を寄せて泣きじゃくるラプター。スパーダも泣きそうな顔してるんだけど、意地でもそれをラプターに見せないんだよ。ラプターに話しかける時だけは絶対にいつも通りの顔してるんだよ。


「司令……」「許せるわけないじゃないですか!いつもは、適当なのに……」


いつも司令にするみたいに胸倉掴むんだけど、司令との身長差が如実に見えるだけで、それがまた虚しい。


「宇宙を取り戻そう。それが、僕たちにできる事だろ」



《スティンガー》《チャンプ》《小太郎》

スティンガーがスコルピオの形見であるペンデュラムを眺めているところに、相棒と弟分が合流。


「遂に終わる。兄を追って始めた、この戦いが。」

「正義はここにあり。アントン博士、見ててくれよ!」


それぞれに背負う故人があるもの同士。

過去を振り返っているけれど、過去だけを見ていた前半戦とは随分その在り方も変わったなと思う。


「俺、強くなれたかな」

「小太郎。お前はチキュウ人最強だ。いつかは、ツルギも超える。俺はそう信じている。」


尊敬する兄貴に認められて笑顔になる小太郎。


故郷の歌を歌いだすスティンガーに合わせるように2人も一緒に歌い始める。

Vシネで一緒だったチャンプはともかく、そうではなかった小太郎まで躊躇わずに一緒に歌っているのは、きっと私たちには見えないところでスティンガーが故郷のことや歌を2人に教える機会があったんだろうなあと。




【決戦日】

翌朝。遂に出撃の時間になった。

ブリッジで待っていたラッキーの前に、次々と仲間が現れる。総勢9人。全員集合。


「俺たちはみんな、お前の作戦に賭ける。命を、お前に預ける」

「ああ。任せろ。」


机の上で左腕を突き合わせる。OP再現最高。



一同、チキュウに降り立ち、敵の前へ。

行く手には数多の敵。そしてその一番奥に、プラネジュームの吸収を続けるドン・ツルギ。


「みんな。約束だ。全員でドン・アルマゲのもとで会おう。」



揃って変身、戦いながら名乗りを決め、ドン・ツルギのもとへと向かう。


「来たかキュウレンジャー。ジャークマターの総力を以て迎え撃て。」


ゼロ号の大群はチャンプ・スティンガー・小太郎が、

インダベーの大群はBN団が、

巨大な敵はカジキボイジャーとオリオンバトラーに乗り込んだラプターとスパーダが、

それぞれに引き受ける。



戦いはなかなか終わらない。

昼シーンと夜シーンが交互に流れているのは、ドン・ツルギパワーなのか、それともマジで数日スパンで戦っているのか。

少なくとも、全員少しずつ、でも確実に消耗しているのは確か。



ラッキー・ガル・ハミィの元にも銃弾は降り注ぐ。

ラッキーを命がけで庇って変身が解けるガル。


「ここは俺に任せろ!俺より先には死なねぇんだろ?」

「……分かった!」


2人が行ったことを確認したガル。


「覚悟しんさいやぁ!!」


飛び上がったところを敵に撃たれる。



巨大戦を継続している2人にもそろそろ限界が来ていた。

スパーダはラプターを庇って墜落。なんとか最後の敵を片付けてスパーダの元に合流したラプターだったが、スパーダの体力も限界。


「ここからは、私がスパーダを守ります。だって、帰ったらみんなで美味しいご飯、食べるんですから!」

「それなら、ラプターにも、食べてもらわなきゃね!」

 「ラプター、行こう。ラッキーたちが待ってる。」

「はい。」


背中を合わせて大量の敵を迎撃するが、ラプターが先に倒れる。スパーダもそれを庇うように倒れ込む。



スティンガー、チャンプ、小太郎も変身が解けた状態で背中合わせになっていた。


「絶体絶命だな」

「フン、ビビってんなら吾輩が一人で片付けてやってもいいぞ」

「これくらい軽いって」


一番軽口叩いてるのに、だからこそ、一番ヤバいのが伝わってくる。


「正義があればなんでもできる。行くぞ!1、2、3……!」


3人が駆け出すと同時に敵からの一斉射撃が始まる。



BN団は背中合わせに立っていた…が、バランスの様子がおかしい。

ずるずる、とへたり込むと、目と口の光が消える。


正直ね、初見の時もまあなんとかなるやろと思ってたんですよ。

当時特撮経験値なかったから「死体が見つかるまで安心するな」的な論は知らなかったのですが、まあそれに近い考えは私にもあったし、所詮子供向け番組だしって。

でもここのカットでもしかしてそういうことある?って思ってしまったんだよね。それくらいのインパクトがある画だった。これで少しでもおのゆーさんの声が入っていたら違ったのかもしれないけれど。

ちなみに全てのオチを知っている2周目でも同じこと思いました。変わってないな私!!


ナーガも同じようにへたり込む。

改めてこの2人ってニコイチだったんだなって思う。


「怒りも、喜びも、悲しみも、恐れも、たくさん手に入れた!君に会えたおかげだ、バランス。」


ここでバランスの二人称「君」が移るのが、良い。



そしてドン・ツルギの前には、ラッキーとハミィが向かっていた。


「なんてこった。残ったのは運任せの男とお嬢ちゃんか」

「その喋り方やめてくれない?ツルギみたいで腹が立つんだけど」


全く以てその通りです。


お前たちに勝つ見込みはないと言い切るドン・ツルギに、やってみないと分からない、俺たちは負けないと言い切って立ち向かっていく2人。

ツルギはドン・アルマゲを受け入れたと言うが、それは自分たちの知っている、自分たちに全てを托したツルギとは違う。

そう信じる2人の声に応えるように、ドン・ツルギの身体から一瞬ホウオウキュータマの光が漏れる。


「今動きが鈍ったぜ。ツルギのことを完全に乗っ取ったわけじゃないみたいだな」


ドン・ツルギはそれでも力の差は明白だと断言する。

まずはハミィをピンポイントで狙撃して変身を解く。

そして戦場に散らばった救世主たちをプラネジュームとして体内に取り込んだ。ここで一瞬映る、地面に倒れ伏す全員のカットが本当に見ていて苦しくなる。


「あとは、任せたよ、ラッキー」



11人分の救世主を取り込んだドン・ツルギはまわりを夜のごとく暗くする。

1人になっても戦いを止めないラッキーだったが、ドン・ツルギの攻撃を受けてサイコーキュータマが粉々に割れる。


「奇跡は起きなかったようだな?」



「ツルギ。俺は、お前のことが大嫌いだった!!」


最初はツルギのことが嫌いだった。救世主だと認めることすら嫌だった。

でも接していくうちに彼の強さを知ったし、たくさんのことを教えてくれた。


「あんたは間違いなく伝説の救世主だ!だから、」「ドン・アルマゲに乗っ取られて、ドン・アルマゲとして死んでいく男じゃない!」

 「お前は俺の仲間だ!」


素面のままでドン・ツルギに食らいつく。


「ツルギ!伝説を作りたいなら、力を貸せ!!」


ラッキーの声に再び応えるように、ホウオウキュータマの力が作動。ドン・ツルギの動きがまた止まる。

赤く輝くドン・ツルギの胸元に、ラッキーが思いきり拳を叩きこむ。



「貴様…何をした…?」

「お前の中に埋め込んだんだよ。俺のシシキュータマをな!」

 「お前の中にあるキュータマは全部で12個。これでキュウレンジャーが全員、ここに揃った!」


ドン・ツルギの身体を囲むように、12個の星座が光り出す。


「みんなで約束したんだ!全員でお前の元で会おうってな!!」


内側からは立ち上がった11人が、外からはラッキーが攻撃。

ドン・ツルギの肉体から11人が飛び出して無事に帰還。

更に、シシとオリオンの力で生まれたはずのサイコーキュータマが12個のキュータマの力で復活。

完全な、伝説を超える伝説の救世主が帰ってきた。

仲間たちの顔を見て「ヨッシャラッキー!」と叫ぶ笑顔が眩しい。




ここで種明かし。

司令をプラネジューム化して吸い込んだところを見て思いついた作戦だった。

キュータマの力は失われない、という一点においては賭けだったが、それも信じて乗り切った。

12人の力を一気にドン・アルマゲの中に集めれば勝機はあると踏んでの作戦。

だから約束した。「全員でドン・アルマゲのもとで会おう」と。父を救う約束も、クエルボを救う約束も果たせなかったけれど、それでも約束した。


「こんな賭け、成功する保証なんてどこにもないだろう?」

「そうだ。だけど、俺たちはこの作戦に賭けた!」

「僕たちは信じてた。キュータマの力も、みんなの力も!」

「離れ離れになっても心はひとつ。全員が信じていたからこそ、できた作戦だねぇ」

「……でも、らしくない司令なんて、司令じゃありません!!あんなことを二度としないでください!二度と!絶対に!!!」


今までの心配が急に解けたらしいラプター、おそらく過去一の胸倉掴みを披露。

そうだよ。司令はこんな風にかっこいいこと言っても締まらないのが似合ってるんだよ。



「ひとりひとりがスーパースター、全員揃ってオールスター!俺たちにできないことは無い!!」

「なんて奴らだ。まさに伝説だ。みんな、ありがとう」



ドン・アルマゲにもはや憑依できる先はない。

しかもツルギはプラネジュームの影響で元通り。完全な形勢逆転。

これを悟ったドン・アルマゲ。遂に宇宙中のプラネジュームに手を付ける。


「宇宙よ!私に憑依せよ!!」

 「私は宇宙。宇宙そのものとなった。」


素体と思しき下半身はそのまま、先程よりは凛々しい顔と、頭部には輪っかのようなデザイン。

明らかにモチーフは天使だが、何一つ天使らしい清らかさも神々しさも持ち合わせていないのが良い。なにより白が基調なのに昭に「薄汚れた白」なのがとてもいい。


「なにが宇宙そのものだ」

「そんな宇宙、俺たちは認めない!」

「ラッキー、行くぞ!」

「ああ!」


「宇宙に歯向かうとはどういうことか、教えてやる!」

「笑わせるな!お前は宇宙でもなんでもない、俺たちが、宇宙に生きるすべてが、お前を認めない!宇宙はみんなのものだ!──行くぞ!!」



全員でキュータマを起動。

本当に最後の戦いが幕を開ける。




【以下雑記】

みなさま大変お疲れさまでした。

何方を推していてもいろいろしんどい回だったのではないでしょうか。

私はボロボロ泣きました。


あらゆる映像媒体の作品において、脳裏に焼き付いて離れない回ってありません?

私の中でこれがそのひとつ。

確かに味方が12人もいて、ほぼ同時進行でいろいろできるって良いよね、って思ってたんですけど、別に全員の死亡シーンを見たいって誰が言ったよ、なあ。人数が多いという利点をそんなところで活かすなよ。



幸運の女神は困難にめげず積極的に行動する者に味方する。成功するためには、勇気をもって果敢に実行すべきだ。 欧文〔英語〕Fortune favors the brave.
"幸運の女神は勇者に味方する", 故事俗信ことわざ大辞典,(参照 2023-07-13)

何度も書いてきたことではありますが。

キュウレンジャーは先の見えない宇宙の中で、「とにかく自分たちを信じる、運を掴み取る、そのためにとにかくやってみる」を信条に、それができるラッキーを旗頭に、ひたすら進んできた12人。

すごい作戦!みたいな扱いになっていますし確かにその通りですが、それ以上に、その根本をラスボスの目の前ですら貫いたからこそもぎ取れた勝利だと思います。


そして、それをできると分かっているからこそ乗ってきた9人。

何がすごいって、確かにラッキーは「命を懸ける作戦になる」とは言っているけれど、その内容は一切言ってないこと。にも関わらず、全員が「ラッキーなら大丈夫」ってついてくるの。そもそも迷いすらしない。これを信頼と言わずしてなんとする。


作戦だって、スティンガーは「やられたのはわざと」なんて言い方しているけれど、そのためには「わざと」と気取られない程度にやられなくてはならない。

でも、作戦の核となる「キュータマが生きた状態でドン・ツルギの体内にあること」という状態は依然不透明なまま。

その状態で「命を懸けてもらいたい」と言うなら確かに1日考える時間を作るのも納得。

それでもその作戦に全て賭ける気持ちは一切変わらない。それがここまでラッキーと仲間たちが積み上げてきた実績と絆なんだろうと思いました。


しかもそれを体内にいて何も知らなかったはずの司令とツルギも完全に把握して協力するチームワークの良さ。

これだから私はキュウレンジャーが好きなんだよ。



グループの分け方も良いなあと思った。

互いに思っていることも事情も言わないまま、敵だと思い込んでいた相棒

話を聞かない我儘な子から師弟関係にまでなった兄弟

保護者と戦えない子から対等になれた仲間

利用しされる関係からかけがえのない2人になれた相棒

ひとりきりで仲間ともうまく行っていなかったのに、今では仲間を誰より信じる2人

切り取られる2人/3人の時間を見る度、ああこの2人は仲が悪かった頃もあったなあ、なんて噛みしめました。


「キュータマに選ばれた」以外になんの共通点も共通点もなかった寄せ集めの12人が、「仲間の言うことだから信じられる」までになったんだなあと。



いや本当はいろいろ書きたい事あったんですよ。

あったはずなんですよ。

でも実際きちんと本編見たらなんかもういいかな、というか。語るだけ野暮だな、と。


命を懸けてでも何かを愚直に信じ続けるってかっこいいね。




次回:

「ドン・アルマゲ!お前を倒して宇宙の未来を切り拓く!なぜなら俺たちは、宇宙に輝く、究極の救世主だからな!」

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